今回は百眼(ひゃくまなこ)の秀も登場!

ディアブロ・トマス(トマスおじさん)が開ける
「パンドラの箱」第一幕

幕が開くと、中央には怪しげなゴシック調の箱がデンッと居座っております。 何故か背景は東京のどこぞの商店街になっているのですが・・・(この場所は後々分かりますヨ)、そこへ、呑気に鼻歌なんぞをまじえながら、チャライ格好の「百眼(ひゃくまなこ)の秀」が登場してまいります(この鼻歌が、ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」なんですヨ、いやはや、この歌を口ずさむなんて、さすが傾奇者(かぶきもの)ですナ)。 ア~ッ! いきなり箱を開けちゃいましたヨ。そりゃ「パンドラの箱」ですヨ~・・・大変だ~! (以下文中、全て敬称略)

ディアブロ・トマス:

グアッハッハッハ、イ~ッヒッヒッヒ

(エコーの効いた大きな笑い声で、颯爽と御登場)。

百眼の秀:

いや~、驚きましたぜ、蓋を開けたらいきなりその格好でお出ましになるんだから。

ディアブロ・トマス:

しかしコスプレはいいのう、なんか、こ~気分が高揚してくるのじゃよ。しっかりなり切ると、別の世界にいる自分に興奮を覚えるのじゃな。自分が自分でないような不思議な気分にドップリと浸れるんじゃからして、こりゃ~病み付きになるかもな。

百眼の秀:

しかし蓋を開けてみたら、以外と軽いのに驚きましたぜ。

ディアブロ・トマス:

それはそうだろうよ、ダンボール製じゃからのう。

百眼の秀:

うへっ、ダンボール製のパンドラの箱なんて見るのはもちろん聞いたこともないもんね(嘲笑)。

ディアブロ・トマス:

そう仰るなよ、天国も最近きびしくてのう、これもコスト削減の一環なんじゃよ。それにコスプレには小道具が必須じゃろうて。

百眼の秀:

ナ~ルホど、それにしても世知辛い世の中になったもんだよな。

ディアブロ・トマス:

それはそうと、今回パンドラの箱から引っ張り出してきたのはコヤツなんじゃがのう。元海軍大臣で総理大臣も経験しておる、あの米内光政じゃよ。

今回のゲスト 米内光政(よない みつまさ)

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1880年(明治13年)3月2日 ~ 1948年(昭和23年)4月20日、日本の旧海軍軍人、政治家。最終階級は海軍大将。位階は従二位。勲等は勲一等。功級は功一級。第23代連合艦隊司令長官。第39-41、49-52代海軍大臣。第37代内閣総理大臣。
米内は1937(昭和12)年に海軍大臣に就任し、陸軍の主張する三国同盟に反対した。また、戦後の極東国際軍事裁判では証人として出廷し、“当初から、この戦争は成算のなきものと感じて、反対であった”、“天皇は、開戦に個人的には強く反対していたが、開戦が内閣の一致した結論であった為、やむなく開戦決定を承認した”と、天皇の立場を擁護する発言に終始したが、果たしてその真相は如何に・・?

百眼の秀:

ホ~、こいつが海軍一の女好きで有名なあの米内ですか。

ディアブロ・トマス:

なんじゃ、おぬし、よ~く知っておるのう。見直したぞよ。

百眼の秀:

おいらは今まで海軍のことは結構勉強してきたもんね。

ディアブロ・トマス:

いくら日本海軍のことを研究しても終戦時にドサクサに紛れて資料を持ち出されているから知っているといってもたかが知れているじゃろうて。

百眼の秀:

それって、いったい誰が持ち出したんだろうね、ふざけた野郎だ。

ディアブロ・トマス:

フン、教えてや~らない。

百眼の秀:

それは殺生な!

ディアブロ・トマス:

や~だもんね、それにお前さんの場合、十年早いもんね。

百眼の秀:

クッソ~、此の意地悪親爺~ッ!

ディアブロ・トマス:

(すっ呆けてコロッとトーンを変えて)、ところで、先般あの閻魔大王にお呼ばれしてな、何かと思って地獄界を久しぶりにお尋ね申したのだが、何だと思いきや、ある苦情をワシに申されたのよ。

百眼の秀:

いったい何だったのさ。

ディアブロ・トマス:

実はナ、大きい声では言えないんじゃが遡ること五年程まえのことなんじゃが、閻魔大王からあるクレームがあったんじゃよ。ほんでな、そのクレームとは、ナンでも米内が地獄界で即席のロック・バンドを結成したらしいんよ。

百眼の秀:

へ~っ、米内光政は地獄界にいたんですかい。それって以外だな~。

ディアブロ・トマス:

いやいや、そうではなくてだな、じつのところ、あ奴はすっ呆けて天国に紛れ込んでいたんじゃな。それを閻魔大王が目ざとく見っけたらしいんじゃよ、そんでじゃな、閻魔大王が“米内はいる場所をまちがっておるんじゃないのかな、トマス殿”と、言うて来たわけじゃ。わしもウッカリしておって、まさか米内が天国に紛れ込んでおるとは夢にも思わんかったけんビックリしてのう、そんで閻魔大王に、どうしたらよいか聞いたんよ。そしたらな、“即座に地獄界に連れてこい”と仰るもんじゃけん、すぐ米内を地獄界にお連れ申したというわけじゃ。

百眼の秀:

でもトマスのオツサンさ~、米内光政は日本の現代史では、ポツダム宣言を受諾せよとの昭和天皇のご聖断を支持して、本土決戦をくい止めて日本の国土の更なる疲弊と国民に更なる多くの死者が大量に出ることを未然に防いだという良いイメージが米内光政評の定説になっているぜ。とくに阿川弘之や、実松譲らが書いた美化小説の影響が大きいと思うがね。

ディアブロ・トマス:

ところがギッチョンチョンなんじゃよ。閻魔大王が言うにはじゃな、あのスタさん(スターリン)がとうとうあの戦争の事の次第をほんの一部ではあるもののヤットコサ白状したらしいのじゃ。

百眼の秀:

ホエ~ッ、本当っすか~。是非聞きたいっすね~。

ディアブロ・トマス:

や~だもんね、まだ教えないもんね。(またまたすっ呆けてコロッとトーンを変えて)話を元に戻すとだな、さっき話したロック・バンドの件なんじゃがな、なんでも九人編成らしいのヨ。頭数だけは一丁前というわけじゃ。閻魔大王によればメンバーの構成はリード・ボーカルが米内光政(総理大臣、海軍大臣、海軍大将)で、バックアップ・コーラスが及川古四郎(海軍大臣、海軍大将)と野村吉三郎(開戦時の駐米大使、外務大臣、海軍大将)で、太鼓持ち、オット間違えた、太鼓叩き、おやっ、これも違うな、そうそう、ドラマーじゃったわい、ウン、でもヤッパシ東条英機の“太鼓持ち”と思しきあの島田繁太郎(海軍大臣、海軍大将)がドラムを担当しておってな、ほんで、リード・ギターが大角岑生(海軍大臣、海軍大将)じゃよ。サイド・ギターは井上成美(軍務局長、航空本部長、海軍中将、後に海軍大将)で、ベース・ギターが岡敬済(軍務局長、海軍中将)っちゅうわけよ。更にじゃな、キーボードが豊田貞次郎(外務大臣兼拓殖大臣、海軍大将)で、おまけにプラスしてラッパが一人いたのじゃよ、そう、トランペットじゃ。確か佐藤鉄太郎(貴族院議員、海軍中将)とかいうたかな、うん、そういえば、そのラッパで“反米、反米”と絶叫しながら吹きまくっておったらしいぞよ。何しろ、この即席ロック・バンドは演奏は下手だしボーカルも音痴で最低らしいんじゃ。この体たらくでは、あの戦争にも負けるわな。そういや~負けも大負けで、あゝいうのをボロ負けっていうねん。世界の戦史上未曾有の負けっぷりだもんね。そうそう、これをいうのを忘れておったわい。バンド・ボーイで石川信吾(海軍省軍務局第二課長、開戦時大佐、、後に海軍少将)が楽器運びを手伝っていたらしいのよ、それとバンドのマネージメントを高木惣吉(海軍省調査課長、開戦時大佐、後に海軍少将)が引き受けておって、何やら“裏”で色々と画策しておったぞなもし。最後にオマケで富岡定俊(海軍軍令部一部一課長、開戦時大佐、後に海軍少将)が、この地獄界のにわか仕立てのライブハウスの入り口で受付を担当しとったらしいのじゃが。ナンでも、とにかく騒がしいだけで調子っぱずれで聞くに堪えないらしく、さすがの閻魔大王も大いに閉口したらしいぞよ(苦笑)。

百眼の秀:

この全部で十二人の海軍軍人達は何か共通点でもあるのかよ。それに山本五十六が入ってないぜ。そしてこのロック・バンドは集まったメンバーの人数が大がかりだけに、ひょっとして米内が格好をつけてバンドに名前を付けていたりして。

ディアブロ・トマス:

(ニターッと意味ありげに笑って)フム、山本はこの十二人とはチョイとばかり筋が違っておるのじゃわい。それにバンドの名前じゃがのう、何だか舌を噛みそうな長い名前じゃったわい。え~っと確か「Mitumasa Yonai & The NAVAL Communistic Red Band」とか言うてたな。わしは、それを聞いて呆れ返ったわな、コヤツは全く反省しとらんのよ(苦笑)。それどころかステージ衣装は真っ赤なジャケットにベルボトムのズボンを纏っておって、おまけに英国製のゴーグル・タイプのキャスリン・ハムネットのサングラスを架けておったわい。一体何を考えておるのか全く解らんバイ。ただ、コヤツらの頭の中がお猿さんのケツ、おっとイケネェ~、お尻のごとく、真っ赤ッカ~なのかナッちゅう位の想像は突き申すのじゃが。

百眼の秀:

それってエーカッコシーの米内光政にしては少しばかり気を利かせたつもりの親爺ギャグじゃね~の。それにしても、そのバンド名は洒落にもなるめぇ~よ(呆れ笑)。ところで、トマスのおっさんよ~、山本は筋が違うって、どういう風に違うの?

ディアブロ・トマス:

ダメヨ、ダメダメ~ン(トマス叔父さんにしては比較的新しいギャグ)、まだ教えないもんね、ウッシッシ。

百眼の秀:

このクソおやじ~、ホントにいやらしいもんな。ところで、いったいどんな曲を演奏して歌ってたんだろうか、ついつい知りたくなってきたぜ。

ディアブロ・トマス:

それ位なら教えてもよかろう。閻魔大王から聞いたところでは曲目はなんと「ロシアより愛をこめて」と、「バック・イン・ザ・USSR」というから、ワシは呆れ返ってもう抱腹絶倒してしまったのよ(失笑)。

百眼の秀:

それって、ナゼだよ?

ディアブロ・トマス:

閻魔大王が言うには米内は陶酔して恍惚の表情で歌ってたらしいがのう。何かを偲んでな。

百眼の秀:

何かって何よ?

ディアブロ・トマス:

それは、オ~ン~ナ、つまり女じゃよ。それも絶世の美女らしいぞよ。

百眼の秀:

ますます知りたくなってきた、トマスのおっさん、教えてくれるか。

ディアブロ・トマス:

フッフッフ、これからが、本日の演目のクライマックスなのじゃ。
グアッハッハッハ、イ~ッヒッヒッヒ(またまたエコーの効いた大きな声で笑い出して)、、 オットット(急にトーン・ダウン)、本日はこれにてお終い。わしゃ~これから次の舞台へ大急ぎでタイム・ワープせにゃ~ならんのじゃ、オイ百眼の秀よ、またな、さらばじゃ、答えは次回に教えてやろうぞ。(エコーを目一杯効かせてグアッハッハッハと大声で笑いながらダンボール製のパンドラの箱の中にソソクサと舞い戻るディアブロ・トマスなのでした)

おや、おや、何ともお忙しい「コスプレ・トマスおじさん」ですけど、それにしてもダンボール製の「パンドラの箱」とは、いくら小道具とはいえ貧乏くさいですナ~。出たり入ったりするんでしょうが、どの位もつんでしょうかネ? マッ、世の中なんだかんだ言っても逼迫経済ですから、色んな意味で節約、節約・・・・。